目次
そもそも外壁塗装の足場はなぜ必要なの?
まずは、なぜ外壁塗装に足場が必要なのかを知っておきましょう。
足場が必要な理由として、主に次の4つが挙げられます。
塗装職人の安全性を確保する
足場があることで塗装職人の安全性が確保されますが、これが一番の目的と言っても良いでしょう。
外壁塗装は2階壁面や屋根の上など高所での作業が伴うため、何よりも安全性を確保しなければ大きな事故に繋がるリスクが高まります。
足場があれば高所でもしっかりと足元の安全を確保できるので、転倒や落下事故を防ぐことができます。
また、足場の上の安全を確保できるということは、足場の下にいる施主様やご家族、通行人も物や人の落下による事故から守ることができるのです。
塗装工事の品質の良し悪しに直結する
足場が無ければ塗装職人の作業中の体勢が安定せず、きれいにムラなく仕上げることが難しくなります。
「ハシゴや脚立で作業できないの?」と考える方もいらっしゃいますが、ハシゴや脚立では作業できない理由がまさにこれです。
ハシゴ、もしくは脚立では足元が安定せず作業中も無理な姿勢、疲れる姿勢になってしまいますが、足場があれば作業スペースが確保され足元も安定します。
足元が安定することによってハケやローラーを使う際も手元が狂いにくくなり、結果的にムラの無いきれいな仕上がりとなるのです。
また、「当社は足場を組まずに工事するので費用が安くなります!」と言ってくる塗装業者もまれにいますが、地上から手の届く範囲の部分的な補修でない限り、そのような提案をする業者は避けた方が賢明です。
足場を組まないということは、業者自ら「足場を組まず不安定な足元での作業になるので、仕上がりは良くないです」と言っているようなものです。
例えば周囲の住宅や壁との隙間が狭すぎて足場が組めない場合などには、「無足場工法」が選ばれることがあります。
この場合、ロープやブランコなどの器具を使用して、足場を組まずに高所作業ができるよう対応してくれるでしょう。
ただし、無足場工法はあくまでも通常の足場設置ができないようなやむを得ない場合に行われる工法です。
問題無く足場が組めるにも関わらず、工事費用を安く抑えるためだけに無足場工法を勧めてくるような業者も避けた方が良いでしょう。
作業効率が上がる
足場を組んで安心・安全・安定の作業環境を作ることで、塗装職人の作業効率も向上します。
塗装工事は片手にハケやローラー、片手に塗料を持って行われることが多いため、ハシゴや脚立の上ではハケやローラーの持ち替えも一苦労です。
また、ハシゴや脚立では一箇所塗るたびに左右へ移動する手間も発生し、作業効率が非常に悪くなってしまいます。
足場を組むことで作業効率はもちろん、工事の各工程の移行もスムーズになるため作業の無駄が減り、結果的に工事を順調に予定通り進めることができるのです。
近隣住宅への配慮
足場を組んだ後には、工事中に発生する粉塵や塗料の飛散を防ぐために、足場の周りに「飛散防止ネット(養生シート)」を設置します。
この飛散防止ネットがあれば粉塵や塗料の飛散、高圧洗浄における汚水の飛散を防ぐことができるのです。
塗装工事は屋外作業になるため、どれだけ注意を払いながら作業しても強風時などには塗料、高圧洗浄の汚水が飛散してしまいます。
万が一塗料や汚水が周辺の建物や通行人などにかかってしまっては大変です。
足場を組むということは、塗装工事だけに意味を持つものではなく、近隣住宅や周辺にお住まいの皆様を守る上でも重要なものなのです。
知っていると通?足場の種類について
お客様側ではそこまで知っておかなくても良い知識ではありますが、一口に足場と言っても実はいくつか種類があります。
足場の種類は、大きく分けると3種類です。
クサビ足場(ビケ足場)
近年主流となっており、多くの現場で見かけるのが「クサビ足場(ビケ足場)」です。
足場として設置する板が幅広のため、しっかりと安全性・施工性が保たれた上で塗装工事を行うことができます。
設置・解体も比較的簡単で足場設置の効率も良い足場ですが、設置の際はハンマーなどで叩いて強固に固定していくため、設置・解体時は騒音が気になるかもしれません。
パイプ足場(単管足場)
パイプ足場(単管足場)は、2本のパイプが足場となりその上を塗装職人が歩くため、クサビ足場に比べると足を滑らせてしまう危険性が増してしまいます。
近年ではあまり見かけなくなりましたが、クサビ足場より狭い範囲で設置することができるので、周囲の住宅や壁とのスペースが無い場合などには今でも用いられます。
単管ブラケット足場
「単管ブラケット足場」は、パイプ足場に「ブラケット」という金具を使用して足場となる板を取り付けた足場です。
クサビ足場は上述のようにハンマーなどで叩いて強固に固定していきますが、単管ブラケット足場はボルトを締めることによって固定していきます。
クサビ足場より騒音が出にくく、パイプ足場より足場は安定しますが、クサビ足場ほど強固に固定されていないため、上手に設置しないと揺れやすくなってしまうデメリットがあります。
外壁塗装における足場の単価・費用について
前項までで、外壁塗装における足場の重要性をお伝えしました。
ここでは、実際に足場の設置にはどれくらいかかるのか、足場の単価・費用について詳しく見ていきましょう。
足場の単価・費用について
足場の組み立て・解体・運搬にかかる価格は、1㎡あたり700~1,000円程度が相場となっています。
ひと昔前までは単価が1,000円以上かかることも多かったので、全国的に単価が下がってきています。
実際に足場にかかる費用ですが、足場費用を出すためにはまず「足場架面積」を算出します。
足場架面積は、
(建物の外周m + 8m ) × 家の高さm
で計算することができます。
※家の外周に足す8mは、外壁(家)から足場までの距離に相当。
ちなみに家の高さは、一階建て = 3.5m、二階建て = 6.0m、三階建て = 8.0mが目安です。
足場架面積がわかれば、足場設置にかかる費用を算出することができます。
足場設置にかかる費用は、
足場架面積 × 足場単価(700~1,000円 / ㎡)
で計算することができます。
例えば、建物の外周8mで二階建ての建物に足場単価800円で足場を設置する場合は、
(20m + 8) × 6m × 800円 = 134,400円
と、計算式だけを見ても費用感があまり掴めないかもしれませんね。
自宅の外周はわからないけど坪数はわかるという方のために、坪数ごとの足場設置の平均費用をまとめてみました。
※足場単価は800円で計算しています。
- 坪数(延床面積)
- 足場費用
- 25坪(83㎡)
- 13~15万円
- 30坪(99㎡)
- 15~16.5万円
- 35坪(116㎡)
- 16.5~17.5万円
- 40坪(132㎡)
- 17.5~19万円
- 45坪(149㎡)
- 19~20万円
- 50坪(165㎡)
- 20~22万円
日本で平均的な戸建て住宅の坪数、30坪〜40坪を見ても、やはり足場設置費用には15〜20万円程度は必要であるのがわかりますね。
ただし、車両が入れないような狭い道の奥、もしくは傾斜地、さらには周囲の住宅や壁とのスペースが狭い場合などには、別途費用が発生する場合もあります。
外壁塗装において足場は無料にはなりません!
使用する塗料や塗装面積によって多少上下しますが、それでも塗装工事総額の2〜3割を占めるのが足場費用です。
そのため、「足場費用が今だけ無料!」「高額な足場設置費用が今だけ半額!」などと謳っている業者を見かけるとお得に感じてしまいます。
しかし、基本的に塗装業者が足場費用を無料にすること、もしくは無条件で大幅な値引きをすることはほぼありません。
「無料」や「半額」と謳っている業者は、塗料代や職人さんの工事代など、別の費用に足場代をこっそり上乗せしている可能性があります。
つまり、足場費用0円のはずなのに総額を見てみると塗装工事の費用相場と大差無い、という訳です。
「結果的に相場通りなら良いんじゃない」と思われるかもしれませんが、そんな嘘をついてこっそり別の項目に費用を上乗せするような業者を信用できませんよね。
15〜20万円もの費用を無料にしたり半額にしていては、その塗装業者は赤字になってしまいます。
そして、その赤字を相殺しようと必要な工程を省いて人件費を浮かせる、塗料を本来の希釈以上に薄めて塗料代を浮かせるなど、手抜き工事をされてしまう恐れもあります。
外壁塗装に足場は必要なものとしっかり理解して、悪徳塗装業者に騙されないようにしてください。
外壁塗装の足場で起こりやすいトラブルについて
外壁塗装において、足場は一度設置すれば完工まで常に使い続ける非常に重要な設備です。
逆に言うと、工事の着工から完工まで常に足場に関わるトラブルが起こる可能性がつきまとうということです。
ここでは、足場に関して起こりやすいトラブルとその注意点について解説します。
足場業者が瑕疵保険に加入していない
足場の設置や解体の際に外壁や窓、もしくは車などに傷をつけてしまうことは少なくありません。
本来であれば「足場業者が補償してくれるだろう」と思われますよね。
しかし、足場業者は塗装業者の外注であるため事故の責任の所在がうやむやにされてしまい、結局泣き寝入りしたり塗装業者に別途費用を支払って修繕してもらったというケースは多いのです。
塗装工事を依頼する前に、足場業者が「瑕疵保険」に加入しているかどうかをしっかり確認しておきましょう。
できれば「瑕疵保険」に加入しているかどうかだけでなく、保険の補償範囲がどこまでかも調べておくとより安心です。
塗装業者が足場を軽視する
ここまでお伝えしたように、足場は外壁塗装においてほぼ必須の設備です。
職人の安全を守り、作業効率が向上し仕上がりにも直結します。
にも関わらず、「工事費用を抑えるために足場は設置しないで工事します」「足場の設置はここだけにして後はハシゴで施工します」と塗装業者側から提案される場合があります。
しかし、足場を軽視する塗装業者は、施工品質や安全性を軽視している信用に足らない業者と言われても仕方がないでしょう。
通常、足場から転落や落下してしまった場合、塗装業者が加入している保険から通院費や慰謝料など保険金がおりるものです。
しかし、そもそも足場を軽視して安全性を軽視しているような業者が、保険に加入しているとは考えにくいです。
足場の重要性を理解した上で、さらにしっかり保険に加入している業者であれば、足場を軽視するような提案は絶対にしないでしょう。
近隣住宅の敷地に足場を設置する
足場に関するトラブルが起こりやすいのが、ご自宅の敷地だけでは足場を設置できないといった場合です。
もしご自宅の敷地だけでは設置ができない場合、近隣住宅の敷地も借りて設置させてもらわなければなりません。
このケースも事例としては決して少なくないので、どなたの住まいでも起こり得る可能性があります。
優良業者であれば近隣住宅に挨拶に伺い、丁寧に事情を説明して協力をお願いしてくれるはずです。
しかし中には、「隣家の裏側だし勝手に設置しても気づかないだろう」「隣家が留守の間に設置してしまえばいい」と提案する悪質な業者も存在します。
このような、少しの手間を惜しんで自分勝手な工事をしようとする業者とは絶対に契約してはいけません。
万が一トラブルに発展し裁判にでもなれば、不利になるのは塗装工事を依頼したご自身になってしまいます。
近隣住宅への丁寧な説明・配慮も怠らないような塗装業者に工事を依頼するようにしましょう。
外壁塗装の足場の重要性や単価・費用 まとめ
外壁塗装においては当たり前のようにワンセットになっており必ず設置される足場ですが、ここまでお読みいただいたように工事の安全性や作業効率、施工品質など様々な面に大きく影響を与えます。
決して安くはない設置費用にはなりますが、外壁塗装には必須の費用と理解し、「足場無料」や「足場半額」を謳う塗装業者に騙されないようにしてください。
足場の目的と費用相場をしっかり把握した上で、安全対策と施工品質の向上に努めてくれる優良塗装業者に依頼するようにしましょう。