外壁塗装におけるケレン作業とは?
外壁塗装におけるケレン作業とは、わかりやすく言うと「塗装面の汚れ・サビ・カビ・ゴミなどの異物を除去する作業」です。
高圧洗浄などと同じく、塗装作業に入る前に行う下処理にあたる作業で、「素地調整」と呼ばれたりもします。
外壁塗装では、塗装作業に入る前に高圧洗浄機を使って、外壁・屋根表面についた汚れを強力な水圧で除去します。
高圧洗浄である程度の汚れは除去できますが、古い塗膜や金属部分に発生したサビ、深く根を張ったカビ・苔などは落とせないこともあるのです。
そんな時に行われるのが「ケレン作業」です。
スクレーパーやケレンハンマー、サンドペーパーやディスクサンダーなどの工具を使い、手作業で塗装面の汚れ・サビ・カビ・ゴミを徹底的に除去していきます。
外壁塗装を数年周期で行なっている方はまずいらっしゃらないでしょう。
塗装工事が行われている建物は、前回の外壁塗装から少なくとも10年、長ければ20年以上経過している場合がほとんどです。
その間何もメンテナンスを行なっていなければ、目に見える部分はもちろん、目に見えない部分にも無数の汚れがこびりついているものです。
今から塗装を行う外壁・屋根を徹底的に綺麗にして、塗料が本来の性能を果たし、少しでも長持ちするように行う下処理が「ケレン作業」なのです。
ケレン作業が見積もりに含まれていることを確認しよう!
上述のように、ケレン作業は実は手間がかかる作業です。
さらに、どれだけ汚れやサビ、カビなどが残っていても、その上から塗装してしまえば全て覆われてしまうため、一般の方が見て「ケレン作業をやってない」と気づくことはほぼ無いと言えます。
そのため、悪徳塗装業者は手間のかかるケレン作業を嫌い、ケレンをしないまま塗装に入ることがあります。
「塗装してしまえばわからないだろう」という心づもりで、ケレン作業を省いて人件費を浮かせようとする訳ですね。
塗装業者から見積もりをもらった際は、項目の中に「ケレン作業」が含まれているかを必ず確認するようにしてください。
ただし、塗装業者によっては、
・下地処理
・下地調整
・素地調整
などと記載する場合もありますし、高圧洗浄とケレン作業をまとめて「下地処理」「下地調整」と記載したりする場合もあります。
「ケレン」の記載が無い見積もり、「下地処理」「下地調整」と記載されている見積もりをもらった際は、塗装業者に確認するようにしましょう。
また、施工中の様子を写真で残しておいてもらえば、実際にケレンが行われていたかどうかが判断しやすいのでより安心ですね。
ケレン作業を行う理由と目的は?
前項で、ケレン作業とはどういったものかについて解説しました。
ケレン作業にどういった意味があるのかはお分かりいただけたと思いますが、
・外壁塗装でケレン作業はなぜ必要なのか?
・ケレン作業にはどんな効果、どんな役割があるのか?
をさらに詳しく見ていきましょう。
塗膜の密着性を向上させる
外壁に汚れや異物を残したまま塗装してしまえば、外壁への塗膜の密着が弱まってしまいます。
例えるならセロハンテープを貼る際に、指の汚れや脂がついてしまえばしっかり貼れないのと同じイメージですね。
密着性を高めるために汚れや異物は天敵です。
外壁にしっかり密着できていない塗膜は、耐用年数を待たずして剥離(はくり)が発生したり、傷やヒビ割れが発生しやすくなります。
塗膜が剥がれたり傷ついてしまえば、その隙間から外壁内部へ雨水が侵入し、やがて雨漏りを引き起こしてしまうでしょう。
どれだけ高耐久な上塗り塗料を使っても、塗膜の下地となる下塗り塗料が外壁にしっかり密着できていなければ、その塗膜は内部がもろくなってしまいます。
外壁についた汚れ・サビ・カビ・ゴミなどの異物をしっかり除去することで、塗料がしっかり外壁に密着し、ようやく塗料本来の性能が発揮できる訳です。
また、外壁材によっては塗料が密着しやすいように、わざと外壁表面にヤスリなどで細かい傷をつけることがあります。
金属でできているガルバリウム鋼板、鉄製の手すりや階段などは、そのまま塗料を塗ってもなかなか密着しにくいのです。
そのため、ヤスリなどで表面を毛羽立たせて塗料が密着しやすい状態にすることを「目荒らし」、あるいは「足付け」と呼びます。
塗料を長持ちさせる
どれだけ高耐久な塗料を使ったとしても、外壁表面に汚れや異物が残っていれば塗膜は長持ちしません。
サビを残して塗装してしまえば、塗膜の下でサビは成長してしまい、やがて塗膜を内側から侵食します。
異物が残っていれば、外壁と塗膜の間に小さな空間ができてしまい、昼夜の寒暖差などによって空気が膨張して内側から塗膜を押し破る可能性もあります。
どんな種類の異物であっても、どれだけ小さな異物であっても、外壁塗装にとっては邪魔者であり、塗膜を剥がしたり割ったりしてしまう脅威にしかならないのです。
塗装の仕上がりが良くなる
ケレン作業によって凹凸が無くなり綺麗にならされた塗装表面には、塗料をムラなく塗ることができます。
ムラなく仕上げられた塗膜は見た目にも美しく、大切な住まいを紫外線や雨風などからしっかり守ってくれるでしょう。
ケレン作業の種類について
ケレン作業には、外壁の状態によって行うべき4つの種類が決められています。
「○種」の数字が小さいほど大規模な工事となり、大きくなるほど小規模な工事となります。
1種ケレン
1種ケレンは、道路や橋、船などの補修の際に行われる作業で、一般住宅で行われることはほぼありません。
なぜなら、一般住宅で1種ケレンをしなければならないほど腐食が進んでしまっている場合、外壁材を張り替えてしまった方が早いからです。
1種ケレンを行う場合、「ブラスト法」という工法を用いて作業します。
「ブラスト法」とは、金属が含まれる特殊な研磨剤を吹き付けることで汚れや古い塗膜を剥がすと共に、塗料が密着しやすいように「目荒らし」も同時に行なっていく工法です。
作業を行う際は専用の機械を使用しますが、騒音や粉塵といった問題もあり、こちらも一般住宅で1種ケレンが行われない理由の一つです。
2種ケレン
2種ケレンは、サビや汚れが全体に拡がり、状態が悪い場合に行われる作業です。
一般住宅で行われることはそう多くはありませんが、鉄骨建築の外壁などでは採用される場合もあります。
2種ケレンでは、ディスクサンダーなど一般的な電気工具の他に、スクレーパーやケレンハンマーなど手作業も併用して行います。
1種ケレンのように専用の機械を使用しないので、騒音や粉塵といった問題が起こらないため一般住宅でも工事が可能となっています。
3種ケレン
3種ケレンが最も皆様にとって身近なケレン作業と言っていいでしょう。
塗装業者が行なっているのは基本的にこの3種ケレンです。
3種ケレンは簡単に言うと、「外壁に部分的な塗膜剥がれやサビはあるものの、既存塗膜がまだまだ残っている状態の外壁」に行う作業です。
前回の塗り替えから10年程度では、施工不良がない限り塗膜剥がれはなかなか起こりませんが、前回の塗り替えから15〜20年以上経過している外壁は大体こちらに該当します。
ディスクサンダーなど電気工具を使う場合もありますが、基本的にはスクレーパーでサビや剥がれた塗膜を除去し、サンドペーパーで磨いて仕上げるという手作業になります。
4種ケレン
4種ケレンは、外壁にサビや塗膜剥がれがほとんど無い状態の良い外壁に行われる作業です。
一般住宅に行われるのはこちらの4種ケレンか、上述の3種ケレンのほぼ2択です。
作業自体も、高圧洗浄で落としきれなかった汚れやサビをサンドペーパーや研磨スポンジなどで除去するといった軽微なものになります。
各種ケレン作業の費用について
上記4つのケレン作業ですが、大掛かりな作業となる1種ケレンが最も費用が高く、軽微な作業の4種ケレンが最も安くなっています。
ケレン作業は、同じ作業でも施工箇所によって費用が異なるため相場を算出するのが難しい工事ですが、各種ケレン作業のおおまかな施工単価は次のようになります。
ただし、1種ケレンについては一般住宅で行われることは無いので、あくまでも橋や船などで行われる作業にて単価計算した価格となります。
- ケレンの種類
- 費用相場
- 1種ケレン
- 3,500~5,000円 / 1㎡
- 2種ケレン
- 1,500~2,000円 / 1㎡
- 3種ケレン
- 500〜1,000 / 1㎡
- 4種ケレン
- 250〜500円 / 1㎡
ケレン作業に必要となる道具について
前項でケレン作業の種類について解説しましたが、作業の種類によって道具・工具が使い分けられています。
ここでは、ケレン作業に使われる道具を5つご紹介します。
ディスクサンダー
その名前の通り、ディスク(円盤)でサンド(研磨)する電動工具で、サンダーと略されたりサンダーケレンと呼ばれたりもします。
砥石タイプやナイロンタイプなど、用途に併せてディスク部分を付け替えることが可能です。
非常に幅広い用途で使うことができるので、DIYをされる方であればお持ちかもしれませんね。
サンドペーパー
手作業で行うケレンにおいて、最もよく使われているのがこのサンドペーパー(紙やすり)です。
こちらも一般の方にもお馴染みの道具ですね。
外壁塗装においても、簡単なサビ落としや外壁の小さな凸凹の補修、外壁表面の仕上げなど、幅広い用途で使われています。
ワイヤーブラシ
ワイヤーブラシはご家庭の掃除の際などにも使われるので、お持ちの方も多いでしょう。
ブラシ部分が自由に稼働してくれるので、サンドペーパーでは手が届きにくく力が入らない隙間なども、しっかり汚れやサビを除去することができます。
使いやすく小回りが効く反面、ブラシは金属でできているため、外壁を傷つけないよう注意が必要となります。
ケレンハンマー
ケレンハンマーは、写真のようにハンマーの両端が特殊な形になってます。
先端が細く尖った側で目地など細かい箇所のサビや塗膜を除去し、大きく角状になっている側でサビや塗膜を一気に削ぎ落とすように使います。
スクレーパー(皮すき)
スクレパーは、ケレン作業に欠かすことができない道具です。
刃を塗膜やサビなどに当て、削ぎ落とすようにして使います。
簡単に扱えて狭い箇所でも小回りが効く上、プラスチック製・金属製と種類も多く、汚れやサビの状態に合わせて使い分けることができます。
外壁塗装にはケレン作業が重要! まとめ
外壁塗装において、ケレン作業がいかに重要かを解説してきました。
ケレンの一手間があるかないかで仕上がりはもちろん、塗料の耐用年数も大きく変わってきます。
一方、外壁のメンテナンスを放置して汚れやサビ、塗膜剥がれがひどくなればなるほど、大掛かりなケレン作業が必要になります。
作業が大掛かりになるほどケレンの作業費用が高くなってしまい、結果的に外壁塗装の工事費用そのものが高額になってしまいます。
塗装工事の費用を抑えるためには、サビや塗膜剥がれが発生する前、外壁の状態が良い内に塗り替えを行うのが得策です。
ケレン作業における費用も少額に抑えることができ、同じ塗装工事でもメンテナンスを放置し続けた時より費用を抑えることができるでしょう。