目次
縁切り(タスペーサー)とは雨水の通り道を確保する建材
タスペーサーとは屋根を塗装する際に、屋根材と屋根材の隙間を埋めないようにするために使用するクリップのような形をした建材です。雨水の通り道を確保するために使用される縁切り専用の部材です。
屋根の塗装は、すべて屋根材の取り付けが終了してから塗装しますが、屋根材の上から塗装すると本来開けなければいけない屋根材の隙間も塗装でふさいでしまいます。
ふさがれたままだと雨水の通り道がなくなるため、縁切りという隙間を開ける作業が必要です。これまでは職人がカッターや皮すき(金属製のヘラ)を使って、塗装を切って隙間を広げていました。
タスペーサーは下塗り後に屋根材の隙間にセットすることで、縁切りという作業をしなくて済み、作業効率が大幅に削減できます。
縁切り(タスペーサー)の種類
タスペーサーは株式会社セイムが開発・販売している製品で、全国で約70万棟で使用されている実績があります(2020年7月時点)。
2024年9月時点では、通気性やクッション性・耐溶剤性を向上させた「タスペーサー01」、主に一般的な屋根補修の際に使用される汎用性の高い「タスペーサー02」の2種類の製品が販売されています。
縁切りをする目的
そもそも縁切りは何のためにするのでしょうか。ここでは、縁切りをする目的をまずは解説します。縁切りをする目的は以下のとおりです。
- 雨漏りを防ぐため
- 内部の結露を防ぐため
- 屋根の下地材や防水シートの劣化を防ぐため
- 毛細管現象を防ぐため
それぞれ解説します。
雨漏りを防ぐため
縁切りする一番の目的は「雨漏りを防ぐこと」です。屋根材は内部に雨水が浸入しても隙間から排出されるようになっています。
しかし、屋根の塗装をすることで屋根材同士が重なる部分の隙間も埋めてしまいます。本来排出されるべき雨水の通り道がふさがれてしまうと、屋根材の下の防水シートや下地材に染み込みやすくなり、やがて雨漏りを起こします。
縁切りは、雨水が正しく排出されるようにふさがれた塗装を切ることで、雨漏りを防いでいます。
内部の結露を防ぐため
縁切りをしないことで、雨水が屋根材の内部にたまりやすくなり湿度が上昇します。屋根の下の部屋に湿気を感じるようになり、カビ臭く感じてしまうことがあります。
実際、縁切りされていない屋根材にカッターを入れてみると、隙間から雨水が流れてくることもあります。それだけ内部にたまってしまうため、内部の結露を防ぐためにも縁切りの作業は必要です。
屋根の下地材や防水シートの劣化を防ぐため
縁切りをしないと、内部に雨水がたまりやすくなり、下地材や防水シートの劣化を早めてしまいます。内部にたまった雨水は、防水シートや下地材に染み込み腐食します。
下地材や防水シートが腐食すると雨漏りにつながるだけでなくカビなども発生し、肺炎や喘息など人への健康被害を招いてしまいます。
毛細管現象を防ぐため
毛細管現象とは液体の中に細い管を立てると、管の中の液体が管の外よりも高くなる、または低くなる物理現象のことをいいます。身近なものでは液体が入ったストローを思い浮かべるとわかりやすいかと思います。
毛細管現象は縁切りされていない屋根材にも起こることがあります。縁切りされていないことで行き場を失った雨水が、屋根材の下から上へ登ってしまい、白い線のようなシミとなって現れる現象が起こります。
毛細管現象を防ぐためにも、塗装を行った屋根は縁切りが必要なのです。
縁切り(タスペーサー)を使うメリット
タスペーサーを使用するメリットは以下のとおりです。
- 簡単に縁切りができる
- 作業時間が短縮される
- 塗装完了したあとの作業が必要ない
- 強風などでも飛散しにくい
それぞれ解説します。
簡単に縁切りができる
タスペーサーの取り付けはとても簡単です。屋根材と屋根材が重なる部分に取り付けるだけで、雨水が流れる適切な隙間が確保できます。
作業時間が短縮される
これまでの縁切り作業は、職人2人で半日〜1日程度必要でした。タスペーサーの取り付けは、30坪程度の屋根であれば2〜3時間程度で作業が完了するため作業時間を大幅に削減できます。
塗装完了したあとの作業が必要ない
タスペーサーは塗装したあとの作業が不要です。従来の縁切りは屋根塗装が完了してから、改めて屋根に登ってカッターや皮すき(金属製のヘラ)を使っての作業でした。
タスペーサーは下塗りの段階で取り付けを行うため、塗装後に改めて屋根に登る必要がありません。そのため、屋根に登った際に屋根を傷つけたり、屋根に足跡が付いたりするリスクがなくなります。カッターや皮すきで屋根材を傷つけることもありません。
また、タスペーサーも一緒に塗装されるため目立たず、適切に縁切りできるのもメリットです。
強風などでも飛散しにくい
タスペーサーは設置が簡単でありながら、強風などでも飛散しにくいのがメリットです。開発の段階で外部検証期間にて実証実験済みの安全性が確保されています。
縁切り(タスペーサー)のデメリット
タスペーサーにもデメリットは存在します。主なデメリットは以下のとおりです。
- 追加費用が発生する可能性がある
- 屋根材の状態が悪いとスレートが割れる場合がある
それぞれ解説します。
追加費用が発生する可能性がある
人の手で行う縁切りに比べて、タスペーサーを取り付ける場合、追加費用が発生する可能性があります。従来の人の手で行う縁切りは、作業工程の中に組み込まれています。
取り付けにはタスペーサーの費用や作業費が発生するため、見積もりの段階で確認する必要があります。タスペーサーを取り付ける場合と、取り付けない場合で差額がどの程度か確認するようにしましょう。
屋根材の状態が悪いとスレートが割れる場合がある
タスペーサーは屋根材と屋根材が重なる部分の隙間に取り付けるため、上の屋根材が持ち上がる状態になります。わずかな隙間ですが、屋根材の状態が悪いとスレートが割れる可能性があります。
タスペーサーを導入する前に、屋根材の状態をよく調べてもらってから導入することをおすすめします。
縁切り(タスペーサー)が必要な屋根
タスペーサーはどの屋根にも適合するわけではありません。タスペーサーを必要とする屋根は「スレート屋根」のみです。
スレート屋根とはセメントを主成分とする厚さ5mm程度の屋根材のことです。フラットな形状をしており、多くの戸建て住宅で使われています。
コロニアルやカラーベストと呼ばれているのがスレート屋根です。スレート屋根は屋根材を重ねるように設置するため、ほかの屋根材に比べて隙間がありません。塗装をするとさらに隙間がなくなるため、タフスペーサーを含む縁切りが必要です。
縁切り(タスペーサー)が不要な場合
縁切りの工程やタスペーサーの施工が必要ない場合はどのような屋根なのでしょうか。縁切りが不要な屋根材は以下のとおりです。
- 屋根材同士に4mmを超える隙間がある場合
- 屋根の勾配が3寸未満の場合
- スレート屋根が反っている場合
- 瓦屋根と金属屋根
それぞれ解説します。
屋根材同士に4mmを超える隙間がある場合
屋根材同士の隙間が4mmを超える場合は、タスペーサーの取り付けや縁切りの施工は必要ありません。4mm程度の隙間があれば、十分に雨水が通る広さが確保されているためです。また、4mmを超える隙間がある場合、しっかり固定できずに抜けてしまう恐れがあります。
屋根の勾配が3寸未満の場合
屋根の勾配(角度)が3寸未満(約15度)の傾斜がゆるやかな屋根の場合、タスペーサーの取り付けができません。取り付ける際、屋根材を傷つける可能性があるため推奨されていません。3寸以下の場合は、従来どおりのカッターや皮すき(金属製のヘラ)を使って行います。
スレート屋根が反っている場合
スレート屋根の上方向に反っている場合は、タスペーサーは取り付けできません。スレートの反りは劣化の症状であり、隙間があることで抜け落ちてしまう恐れがあります。
スレートの反りが見られたら、早めに屋根修理業者へ連絡して修理してもらうようにしましょう。
瓦屋根と金属屋根
瓦屋根の場合は、屋根材同士が重なり合うように取り付けますが、十分な隙間が確保できるため必要ありません。また、金属屋根も、もともと適切な隙間が生まれるような設計のため同じく取り付けは不要です。
縁切り(タスペーサー)の取り付け方法
タスペーサーを取り付ける際は、以下の流れで行います。
- 下塗り
- タスペーサー取り付け
- 中塗り、上塗り
それぞれ解説します。
下塗り
下塗りは色付けの中塗りと仕上げとなる上塗りの密着性を高めるために塗る下地になります。
タスペーサー取り付け
タスペーサーは、下塗りが乾いたのちに取り付けします。従来の縁切りは上塗りまでが終了し、1〜2日程度完全に乾燥させてから行います。
タスペーサーは、屋根材1枚取り付けるごとに2枚必要です。この工法は「ダブル工法」と呼ばれ、メーカーが推奨する取り付け方法です。
しかし、タスペーサーは下塗りの乾燥後に取り付けるため、すべての塗装が終わるのを待つ必要はありません。タスペーサーの取り付けも数時間程度で完了するため、工期の短縮にもなります。
中塗り・上塗り
中塗りと上塗りを行い、すべての乾燥が終わったら終了です。タスペーサーを取り付けることによって屋根に足跡がついたり、屋根材が傷つくことがありません。
縁切り(タスペーサー)の施工費用
タスペーサー1個あたりの単価は20〜50円程度です。
1枚の屋根材に対して両端に1個ずつの計2個使用します。一般的な住宅の20〜30坪であれば、700〜1,000個ほど使用します。
費用に換算すると2〜5万円程度が、タスペーサーを取り付けるための費用です。
縁切り(タスペーサー)の注意点
縁切り(タスペーサー)の注意点は以下のとおりです。
- 見積もりに「タスペーサー」の表記があるか確認する
- タスペーサーが取り付けられているかを写真付きで報告してもらう
- 費用の削減になるかは使用する数や建物の規模による
それぞれ解説します。
見積もりに「タスペーサー」の表記があるか確認する
タスペーサーを希望する場合、確実に施工してもらうためにも見積書に明記されているかを確認するようにしましょう。
また、「縁切り」の項目がある場合は人の手で行うのか、タスペーサーを使用するかどうか確認することをおすすめします。どちらもない場合も含めて事前に確認するのがトラブル防止になります。
タスペーサーが取り付けられているかを写真付きで報告してもらう
タスペーサーの取り付け工事の場合、施工したかどうかは取り付け後に写真で報告してもらうと、どのように施工したのか確認できます。
工事後の完了報告書をもらう際に、写真も含めて報告してもらうようにしましょう。
費用の削減になるかは使用する数や建物の規模による
タスペーサーのデメリットでも解説しましたが、追加費用が発生する可能性もあります。これまで人の手で半日〜1日程度かかっていた作業が2〜3時間で終わるのであれば人件費の削減になります。
しかし、タスペーサーを取り付けることで作業工賃以外に製品代金がかかります。使用する数量が増えてしまうと、その分費用がかかります。人の手で縁切りを行うのか、タスペーサーを使って工期を削減するのがよいのかは、見積もり時によく確認してみましょう。
まとめ
今回は、スレート屋根を塗装するうえでは必要な「縁切り(タスペーサー)」について解説しました。
縁切り(えんぎり)とは、屋根塗装によってふさがれた屋根材と屋根材の隙間をあけて、雨水の通り道を確保することです。そして、縁切りをする目的は、以下のとおりです。
- 雨漏りを防ぐため
- 内部結露を防ぐため
- 屋根の美観を保つため
- 毛細管現象を防ぐため
屋根塗装は、屋根材をすべて施工した上から塗装するため、屋根材同士の隙間がふさがれることで雨水の行き場がなくなり、雨漏りにつながってしまうのです。
タスペーサーは、株式会社セイムが開発・販売している縁切りの作業を大幅に削減する縁切り専用の道具です。タスペーサーを使うメリットは以下のとおりです。
- 簡単に縁切りができる
- 作業時間が短縮される
- 塗装完了したあとの作業が必要ない
- 強風などでも飛散しにくい
デメリットは、タスペーサー代がかかることやスレート屋根の状態によっては、スレートが割れてしまう恐れがあります。
取り付ける際は屋根の状態をよく確認したうえで導入するようにしましょう。タスペーサーの取り付けが不要な場合もあるため、タスペーサーの取り付け作業に慣れた屋根修理専門業者に依頼することをおすすめします。
屋根修理専門業者を探すには、「ペイントGO」がおすすめです。ペイントGOは優良な業者のみが集まる検索サイトです。掲載している業者は、施工実績やサービス品質に優れた業者のみが掲載されています。
高品質だけでなく、適正価格で屋根塗装をご希望なら、ぜひ「ペイントGO」をご活用ください。