目次
外壁のひび割れ(クラック)の種類とその対処法について
外壁には大小様々なひび割れが発生しますが、実は一口にひび割れと言ってもいくつか種類があります。
そして、ひび割れの種類が違えば原因も異なり、対処法も違ってくるのです。
まず、外壁のひび割れにはどんなものがあるのかを見ていきましょう。
ヘアークラックとは?
髪の毛のように細いひび割れを、その名の通り「ヘアークラック」と呼びます。
具体的には、幅0.3㎜以下、深さ4mm以下の細いひびを指します。
どうしてヘアークラックが発生するのかですが、外壁材(コンクリート・モルタル)は主に紫外線の影響によっては乾燥し、日中の寒暖差や湿度変化などで膨張・収縮を繰り返します。
この外壁材の膨張・収縮によって塗膜を内側から押し上げてしまうため、塗膜表面にひび割れが起こるのです。
通常、適正に施工された塗膜では発生しないため、ヘアークラックが発生するのは外壁塗膜の劣化が一番の原因と考えられます。
ただし、塗装の耐用年数は短くても10年程度ですが、それよりも明らかに短い期間でヘアークラックが発生した場合は、
・塗装時の塗膜の乾燥時間不足
・外壁材と施工した塗料の相性が悪い
といった塗装業者による施行ミスの可能性もあるため、「塗装工事からどれくらいでヘアークラックが発生したか」も注意して観察しておきましょう。
塗膜の経年劣化が原因のヘアークラックの場合、「すぐに補修をしないと建物に雨漏りなど大きな被害が発生する」といったことはありません。
緊急性の低い外壁の劣化症状と言えるでしょう。
ただし、長期間放置したままにするとひび割れは徐々に大きくなり、いずれは外壁内部へ雨水を通してしまうようになります。
塗装工事から10年以上経過した時点でヘアークラックを見つけた場合、「そろそろ塗り替えのタイミングかな?」と目安にするようにしてください。
そして、10年を待たず数年でヘアークラックを見つけた場合、塗装業者による施行ミスの疑いがあるので、対応してもらえないか塗装業者に問い合わせるようにしましょう。
ヘアークラックの対処法・補修方法
ヘアークラックは細く小さなひび割れのため、比較的簡単に補修することができます。
方法はいくつかありますが、塗装でひびを塗り重ねてしまうのが最も一般的でしょう。
注意点は、塗装前にフィラー(下地材)をひび割れに塗り込むことです。
そうすることで、ただ塗装するよりしっかりとひび割れを埋めることができ、ひび割れの再発を防止することができます。
次に、ひび割れにコーキング剤・セメント接着剤を充填し、ひび割れを埋めてしまうといった方法もあります。
ただし、コーキング剤・セメント接着剤は粒子がそこまで小さくなく、幅0.3㎜以下のヘアークラックではひび内部にうまく充填できない場合もあります。
そこで、「Vカット(あるいはUカット)」と呼ばれる、ひび割れに対してV字・U字に溝を掘る方法を用いることがあります。
溝を掘ってわざと隙間を作ることで、そのまま充填するよりしっかりとコーキング剤・セメント接着剤がひび割れの中に入り込むようになるのです。
構造クラックとは?
構造クラックは、ヘアークラックを通り越し、ひび割れが外壁内部まで進行している状態です。
具体的には、幅0.3㎜以上、深さ5mm以上のひびを指します。
構造クラックが起こる原因についてですが、後述する5つの原因いずれの場合でも起こり得ます。
構造クラックは危険度が高く、緊急性の高い外壁の劣化症状です。
ある程度以上のひび割れが発生していると、建物内部へ徐々に雨水が侵入してしまい、外壁材は著しく痛んでしまいます。
さらに放置し、建物躯体まで雨水が侵入してしまえば、雨漏りの原因になってしまう以外にも、カビやシロアリが発生する危険性もあります。
建物躯体が腐食してしまい、躯体の修繕となれば塗装工事よりも高額な修繕費用が必要になってしまいます。
建物に甚大な被害が出る前に、早め早めの対処が必要になるのが構造クラックです。
構造クラックの対処法・補修方法
構造クラックはひびの幅が広いだけでなく深さもあるため、塗装を塗り重ねても効果がありません。
ひびを埋めずにそのまま塗装すれば、塗膜の下に空洞ができてしまうことになり、空洞に溜まった空気が日中の寒暖差によって膨張・収縮を起こします。
そして、塗膜を内側から押し出してしまうため、塗膜の浮きや剥がれが起こる原因となってしまうのです。
構造クラックの補修としては、ヘアークラックと同じように「Vカット・Uカット」を行い、ひびの内部までコーキング剤をしっかりと充填することが重要となります。
また、これは対処法ではなく予防になりますが、塗装の際に「弾性塗料」を選ぶのも効果的です。
弾性塗料は、塗料の中に伸縮機能を持った添加剤(可塑剤)が配合されている塗料で、他の塗料よりも高い伸縮性(弾力性)を持った塗料です。
伸縮性を持たない塗料の場合、地震などによって建物自体が歪んで下地にひびが入った際、塗膜にも一緒にひびが入ります。
一方、弾性塗料であれば塗膜自体が伸びてくれるので、ひび割れへの追従性が期待でき、ひびが表面化するのを防いでくれます。
一般の方は塗料選びの際にそこまで気にする必要は無いかもしれませんが、ひび割れリスクが高いと言われているコンクリートやモルタルといった外壁材を採用している住宅への塗装では検討されても良いかもしれません。
上記以外のひび割れ(クラック)について
外壁のひび割れは大きく分けて上記の2種類で、皆様が覚えておくべきなのは「ひび割れの幅を見て、ヘアークラックか構造クラックかをチェックする」「構造クラックであれば早めに対処する」という2点です。
ただ、より細かく分ければさらに3つのクラックに分けることができるので、覚えておいて損はありません。
まずは、一番皆様に馴染みがあるであろう『開口クラック』です。
開口クラックは、窓枠やサッシなど開口部の近くに発生し、窓枠やサッシの端から斜め方向に亀裂が入るという特徴があります。
このような開口部は上下だけでなく左右にも力がかかっており、地震などで建物が揺らされた際の歪みでひびが起こりやすくなっています。
とは言え、これは構造上仕方の無い部分もあり、原因要素を完全に取り除くのは「窓枠などを一切取り付けず、一面壁だけにする」くらいしないと不可能です。
ひび割れが発生しやすい箇所ですが、同時に雨水がよく通る場所でもあるので、開口クラックを放置すると建物内部に雨水が侵入してしまいます。
対処法も開口部の造りによって異なりますが、見つけたら早めの対処が必要になります。
続いて、『乾燥クラック』です。
乾燥クラックは、ひび割れの幅がヘアークラックより細く、間近で目視しないと気づかない程度のひび割れです。
これはモルタル外壁によく起こる症状ですが、あくまでも塗装表面のみの微細なひび割れであり、外壁塗膜が完全に乾燥しているのであれば、それ以上クラックが広がることもありません。
緊急性の低いひび割れですが、気になる人は塗装の際に「弾性塗料」を選ぶのが良いでしょう。
最後に、『縁切れクラック』です。
縁切れクラックは、先に塗装した箇所と後から塗装した箇所の境目に起こるひび割れです。
こちらも「乾燥クラック」同様にモルタル外壁によく起こる症状で、塗装の際に雨天などで作業が中断された際、後からの塗装までに時間がかかり過ぎてしまうと前後で乾燥に差が出てしまうために起こる現象です。
こちらは、塗装業者が注意することで防ぐことが可能なひび割れです。
もし発生してしまえば、構造クラックやヘアークラックと同じように「Vカット・Uカット」でコーキングを充填して対処します。
外壁にひび割れ(クラック)が発生する5つの原因とは?
前項では、外壁のひび割れにどんな種類があるのかをお伝えしました。
それでは次に、本題である「どうして外壁にひび割れ(クラック)が発生するのか?」について、原因となる5つの要因を見ていきましょう。
外壁塗装の経年劣化
経年劣化は、長い年月の経過と共に自然と起こる劣化のことで、外壁塗膜も経年劣化が起こります。
特に外壁は、24時間365日紫外線や雨風の影響を受けているため、塗膜は必ず経年劣化します。
ひび割れもこの経年劣化によって起こり、他のチョーキングや色褪せといった塗り替えのタイミング目安となる症状も経年劣化が原因で起こる場合がほとんどです。
塗装業者による施工不良・施工ミス
塗装業者による施工不良や施工ミスでひび割れが起こることもあります。
外壁塗装によく使用されるシリコン塗料は耐用年数が10年ほどあり、立地や環境にもよりますがおよそ10年近くはひび割れは起こりません。
耐用年数=寿命の範囲内であり、まだ前項の「経年劣化」が起こっていない訳ですね。
にも関わらず、施工から数年、早い場合には数ヶ月でひび割れが起こることがあります。
そんな時には、塗装業者による施工不良・施工ミスの疑いがあります。
具体的には、
・塗装時の塗膜の乾燥時間不足
・外壁材と施工した塗料の相性が悪い
の2つです。
基本的に外壁塗装は、「下塗り・中塗り・上塗り」の三度塗りを行います。
この下塗りから中塗り、中塗りから上塗りと工程を進める際、先に塗った塗料が完全に乾燥するのを待たなくてはなりません。
しかし悪質な塗装業者は、乾燥による待ち時間を惜しみ、完全に乾ききっていないにも関わらず次の工程へ進んでしまうのです。
理由は、「工期短縮」と「人件費の削減」です。
各塗料ごとに必要となる乾燥時間は決まっていますが、この乾燥時間を守らず塗られた塗膜はひび割れが起こりやすくなるのです。
また、いくらしっかり乾燥時間を守っても、外壁材と選んだ塗料の相性が悪ければやはりひび割れが発生しやすくなります。
塗装業者が知識・経験不足によって相性の悪い塗料を選んでしまえば、ひび割れ以外にも塗膜の浮き・剥がれといった不具合が起こる可能性が高まってしまうのです。
さらに、高圧洗浄やケレン作業といった塗装前の下処理をしっかり行わなかった場合にも同様の不具合は起こりやすくなります。
もし、10年を待たず数年でひび割れが起こった場合、塗装業者による施工不良・施工ミスの疑いがあるので、対応してもらえないか塗装業者に問い合わせるようにしましょう。
地震よる建物の歪み
地震が起こった際、揺れによって建物に歪みが生じます。
この歪みが原因で外壁塗膜、そして外壁材にひび割れが発生することがあります。
この場合、もし外壁に発生したのがヘアークラックであっても、外壁材や建物躯体はより甚大なダメージを受けている可能性があります。
「ヘアークラックだから大丈夫」と油断せず、地震の後にひび割れを発見した場合には一度専門家の外壁診断を仰ぐようにしましょう。
長期にわたる車や電車による揺れ
大きな幹線道路の近く、あるいは線路の近くにお住まいの方は、車や電車が通る際に揺れを感じることはないでしょうか?
実は、この小さな揺れも建物にとってはダメージを蓄積する原因となります。
地震のように大きな揺れではないので気づきにくいですが、実は長期にわたって揺れを受け続けた外壁もひび割れが発生するのです。
その他の外壁のひび割れを引き起こす原因
外壁にひび割れが発生する場合、ほとんどが上記のような原因です。
しかしそれ以外にも、
・住まいの設計ミス、構造上の問題
・想定外の地盤沈下
・想定外の災害(非常に強い揺れを伴う地震や想定以上の強風を伴う台風など)
などが原因でひび割れが起こることもあります。
外壁にひび割れ(クラック)は火災保険の対象になる?
火災保険はあくまでも自然災害が原因で建物に被害が発生した場合に適用されるもので、経年による劣化・被害には適用できません。
そのため、ひび割れが発生する原因としては経年劣化が一番多いですが、実際にひび割れに火災保険が適用された事例は非常に少ないです。
しかし、上記の原因の内、台風や強風など自然災害による被害だと保険会社に認定されれば保険が適用されるケースもあります。
もし台風や強風の後にひび割れを発見した場合は、火災保険の活用を検討されても良いかもしれません。
しかし繰り返しになりますが、外壁のひび割れは経年劣化と判断される場合が多く、申請が通らないことも多いので注意してください。
台風や強風によって風で飛ばされてきたものが原因で外壁にひび割れが起きた場合は、被害の状況を撮影しておき、早めに火災保険の申請を行いましょう。
外壁のひび割れ(クラック)の原因は? まとめ
外壁のひび割れは、気づかなければ気づかない小さな被害のようにも見えます。
しかし、一度ひび割れが発生してしまうと、補修を行わない限り自然に状況が良くなることは決してありません。
そして、長期にわたって放置してしまえば、いずれは雨漏りを引き起こし、建物に甚大なダメージを与える要因にもなります。
そこまで被害が進んでしまうと、大掛かりな修繕工事が必要となり、多額の出費を伴うでしょう。
ひび割れは「ヘアークラック」や「構造クラック」など大小様々な種類がありますが、どんなひび割れであっても早めに対処するのがおすすめです。
また、外壁のひび割れは、訪問営業を行なっている塗装業者に目をつけられやすい劣化症状です。
外から見てすぐにわかりやすく、かつ「早く修理しないとすぐ雨漏りしますよ!」などと皆様の不安を煽りやすいからです。
しかし、外壁塗装では「訪問営業を行なっている塗装業者とは絶対に契約するな」が鉄則です。
もし外壁にひび割れを発見した場合には、ぜひペイントGOで信頼できる塗装業者を見つけてください。