目次
外壁タイルがメンテナンスや塗装が不要とされている理由とは?
まず、どうして外壁タイルはメンテナンスや塗装が不要とされているのか、外壁タイルの特徴と併せてご説明します。
タイルは無機物、だからこそ高耐久・高耐候性
外壁材には無機物と有機物の2種類がありますが、外壁材として使われているタイルは無機物に該当します。
ちなみに無機物とは、砂・石・ガラス・金属などを指します。
タイルは砂や石、土を高温で焼き上げて成形することでできる外壁材なので、無機物の外壁材となるのです。
身の回りを思い浮かべていただくとイメージしやすいですが、砂や石といった無機物は基本的に劣化することなく自然界に存在し続けていますよね?
外壁タイルはこの無機物でできているため、紫外線や雨風など自然環境の影響を受けにくく劣化や変色が起こりにくいのです。
つまり、高耐久・高耐候性といった性質を持っているのが外壁タイルという素材なのです。
※「LIXIL住宅外壁タイル スペシャルサイト」 「日本タイル業協会」より抜粋
余談になりますが、外壁タイルと同じように無機物を使用した「無機塗料」も耐用年数が非常に長い塗料として有名です。
ただ実際には、100%無機物だけで作られた塗料は存在しません。
これは塗膜を形成する樹脂が有機物でしか作れないためであり、無機塗料と呼ばれている塗料であっても何割かは有機物が配合されています。
しかし無機物の特性を活かし、それまで最も高耐久とされていたフッ素塗料を大幅に超える耐用年数を誇る塗料として、年々シェアを伸ばしています。
外的要因による外壁材の損傷を防ぐ高い耐傷性
タイルは製造の過程において、1,300度というかなりの高温で焼き上げられて作られています。
高温で焼いて固めているため非常に硬い素材であり、同時に耐傷性にも優れているのがタイルという素材です。
通常のサイディングやモルタルといった外壁材は、風で飛んできた砂やほこりなどが外壁に当たることで少しずつ傷がついていきます。
そしてその傷(目にはわからないほどの凹凸)に汚れが付着したり劣化が起こったりすることで、外壁塗装が必要になったりサイディングの張替えが必要になったりします。
しかし外壁タイルは上述のように非常に硬い素材であり、砂やほこり程度で傷がつくことはありません。
このように、耐傷性に優れているからこそ、外壁タイルは汚れの付着や劣化が起こりにくい素材と言われているのです。
他の外壁材と比較して耐水性にも優れている
タイルはその吸水率によってⅠ類、Ⅱ類、Ⅲ類と3つに分けられています。
具体的には、
Ⅰ類=吸水率3.0%以下
Ⅱ類=吸水率10.0%以下
Ⅲ類=吸水率50.0%以下
となっており、外壁タイルはこの内Ⅰ類、もしくはⅡ類に該当します。
サイディングやモルタルといった外壁材は、雨水・湿気などを吸収・乾燥を繰り返すことで伸縮が起こってしまい、そこから素材自体の劣化がはじまってしまいます。
そのため、外壁材が雨水・湿気などを吸わないように塗装による塗膜で防水性を高めてあげる必要があるのです。
一方外壁タイルは、吸水率が3〜10%とほとんど水を吸うことがないため、伸縮のリスクが少なく劣化が起こりにくい、そして吸水による雨漏り被害も起こりにくいのです。
耐水性にも優れている点も、外壁タイルが塗装やメンテナンスが不要とされている理由の一つと言えるでしょう。
知っておきたい外壁タイルの施工方法
外壁タイルの施工方法には2種類の工法が存在します。
施主様からすると、工法自体はそこまで気にする必要が無いかもしれません。
ただ知っておくと後述する、外壁塗装になぜメンテナンスが必要になるのか?への理解度も高まりますので解説します。
湿式工法
湿式工法は、モルタルでできた下地の上にタイルを貼っていく工法であり、一般の方がイメージするタイルの工法はこちらではないでしょうか?
灰色のモルタルを下地に塗り、モルタルが乾く前に上から綺麗にタイルを並べていく、まさにあの工法です。
モルタルを作る際は、セメントに砂と水を混ぜる必要がありますが、この際水を使うため湿式と呼ばれています。
乾式工法
乾式工法は、タイルの貼り付けにモルタルではなく接着剤を用いる工法です。
場合によっては、特殊な下地にタイルを引っ掛け、さらに接着剤で貼り付けて強度を増すといった工法が採用されることもあります。
近年では、外壁タイルを戸建て住宅に施工する場合は乾式工法が採用されるケースがほとんどです。
理由としては、乾式工法は湿式工法と比べてコストを抑えることができ、施工期間も短くて済むといったメリットがあるためです、
そして何より、上述のように湿式工法ではモルタルを使用しますが、モルタルは乾燥することで硬化し、変形しにくくなるといった特性を持っています。
これだけを聞くと何も悪いことのように感じませんが、変形しにくくなるということはタイルの気温や湿度の変化による変形に対応できないです。
そのため、乾式工法は目地の割れやタイルの剥がれが起こりやすくなるというデメリットがあります。
一方の乾式工法なら、下地に追従性の高い接着剤を使用しているため、目地の割れやタイルの剥がれが起こりにくいといったメリットがあるのです。
外壁タイルにメンテナンスが必要な理由とは?4つの事例を紹介
ここまでお読みいただくと、「それだけ高耐久・高耐候・高耐傷ならメンテナンスなんて必要ないんじゃない?」と思われるでしょう。
しかし、いくら外壁タイルが優れた素材であっても、以下のようなケースにおいてはメンテナンスが必要となります。
外壁タイルにメンテナンスが必要となる事例を4つ紹介します。
下地であるモルタルの劣化
前項でご紹介したように、近年では外壁タイルの施工は乾式工法が主流ですが、それまでは湿式工法が主流でした。
そして、湿式工法には下地であるモルタルが硬化し変形しにくくなってしまい、目地の割れやタイルの剥がれが起こりやすくなるというデメリットがあります。
下地であるモルタルにひび割れが起こると、その隙間から雨水が建物内部へ入り込み、雨漏り被害を引き起こす大きな要因となります。
多くの方が「雨漏りは屋根から起こるもの」と思いがちですが、実際には外壁から雨漏りが発生したという事例は非常に多いのです。
雨漏りは外壁であっても屋根であっても、雨漏りが建物の隙間から内部へ入り込む→防水シートが雨水を防ぐ→防水シートだけで受け止めきれなくなった雨水が建物躯体まで染み込む→溢れた水が室内まで染み出してくる、といった流れで発生します。
そのため、実は雨漏りが発生していたとしても実害としては目に見えないので発生に気づかないケースが非常に多く、さらに外壁からの雨漏りは横殴りの雨時でないと起こらなかったりするため、さらに気づくのが遅れがちです。
建物躯体まで被害が及んでしまうと、修繕にも多額の費用が必要となってしまうでしょう。
外壁タイルの施工に湿式工法を採用している場合、外壁にも定期的なメンテナンスが必要となります。
目地(コーキング)の劣化
外壁タイル自体は無機物のため非常に高耐久・高耐候ですが、目地部分に使われているコーキングは決して耐用年数が長くありません。
タイルとタイルの隙間にゴム質の素材が充填されていると思いますが、その部分がコーキングです。
コーキングは外壁材より紫外線に弱いという特性があり、新築から早くて5年、長くても10年程度でヒビ割れたり、裂けたりします。
コーキングのヒビ割れや裂けは、前項のモルタルの劣化と同じように建物内部へ雨水を侵入させる大きな要因となってしまいます。
また、劣化が進んだコーキングは施工当初より硬くなりますが、硬化も劣化症状の一つなので覚えておきましょう。
コーキングは地震など建物に大きな衝撃が加わった際、建物への衝撃を最小限に抑える役割があります。
コーキングの硬化は雨漏りの原因にもなりますが、それ以上に建物の耐久性に関して大きな影響を及ぼすので、決して見逃せない劣化症状と言えます。
そのため、外壁タイルがどれだけ綺麗であっても、コーキング部分は10年に一度のサイクルで打ち増し、もしくは打ち替える必要があるのです。
外壁タイルの剥がれ・浮き
外壁のメンテナンスを行うべき目安として、目に見えてわかりやすい症状がタイルの剥がれ・浮きです。
乾式工法であっても、昼夜の寒暖差や雨による浸水・湿気が原因で次第に粘着力が低下し、やがて外壁タイルの剥がれ・浮きが発生します。
剥がれ・浮きが起こる主な原因は接着剤の粘着力低下ですが、場合によっては施工不良によって症状が発生することもあります。
具体的には、タイルと下地を接着する際の圧着不足、下地処理のミス(接着剤とタイルの間にゴミが入り込む、既存の下地の除去・撤去の甘さなど)といった場合です。
また外壁タイルの剥がれ・浮きは、高所からタイルが剥がれ落ちて通行人に当たるなど思いがけない二次被害を生む恐れもあります。
もし外壁タイルに剥がれ・浮きなどの不具合を発見した場合は、早急に業者に依頼して修繕するようにしましょう。
外壁タイルのヒビ割れ・欠損
基本的には非常に耐久性が高く硬い外壁タイルですが、例えば台風の際などは飛来物による衝撃などでヒビ割れが起こったり欠けたりする場合もあります。
ヒビが大きいとその箇所から内部に雨水が侵入したり、水分によって粘着力が低下したりする恐れもあるので、ヒビや欠けを見つけた場合も早めに修繕するようにしましょう。
外壁タイルに塗装が必要となる事例と費用相場
外壁タイルに対してメンテナンスが必要となるのは前項でご紹介した4つの事例であり、基本的には塗装によるメンテナンスを行う必要はありません。
繰り返しになりますが、タイル自体が非常に耐久性が高いため、サイディングやモルタルのように塗膜で紫外線や雨風から守らなくても長い耐用年数を維持してくれます。
また、外壁塗装には美観の保持という目的がありますが、そもそもタイルは変色・褪色が起こらないので塗装による美観保持も不要です。
それでは、外壁タイルに塗装が必要になるのはどんな時でしょうか?
外壁タイルに塗装を行う場合の費用相場と併せてご紹介します。
クリア塗装によってタイルに艶を出したい or 塗装によってタイルの色を変えたい
クリア塗装によってタイルに艶を出したい、もしくは塗装によってタイルの色を変えたいという場合には、外壁タイルに塗装をする場合があります。
それでも、「見た目の印象を変えたい」「タイルの色を変えたい」といった要望からタイルに塗装を行う場合もあるでしょう。
その場合でも、色付きの塗料は避けてクリア塗装にとどめておいた方が無難です。
クリア塗装とは、透明な塗料を使用して塗装を行うことです。
塗料自体が透明なため、外壁材の質感を維持した状態で、塗膜による外壁材の保護をすることができ、また失ったツヤを取り戻すことも可能です。
クリア塗装を行う際は、必ずタイル用の塗料を選ぶようにしましょう。
塗料には「適用下地」が定められており、カタログにも用途の記載が必ずあります。
しかし、どちらの場合も一度塗装を行うと、どんな塗料であっても外壁タイルと比べて耐用年数は短いため、塗料の耐用年数に応じて塗り替えの必要が発生し、その分のメンテナンス費用が発生してしまうというデメリットがあります。
せっかく何もしなくても長い耐用年数を誇るタイルに塗装をすると、本来必要のなかった塗り替え費用が発生するという点にはご注意ください。
一度でも塗装してしまえば、いずれ塗り替えを行う必要があるため、業者に相談した上で慎重に検討しましょう。
外壁タイルを塗装する場合の費用相場
もし外壁タイルに塗装をする場合の費用はいくらくらいが相場なのでしょうか?
外壁タイルに塗装をする場合の単価は、2,000〜4,000円/㎡となっており、通常の塗料と同じように塗料の耐久性によって単価は変動します。
首都圏近郊の戸建て住宅の平均坪数が35坪、平米換算すると約115㎡なので、平均的な戸建て住宅をタイル塗装する場合は30〜50万円といったところです。
ただし、この金額はあくまでも外壁タイルにかかる費用のみの計算となるため、足場費用や屋根塗装は含まれていないので注意が必要です。
外壁タイルに塗装やメンテナンスは必要? まとめ
外壁タイルはサイディングやモルタルと比べ非常に高耐久な外壁材ですが、メンテナンスを全くしなくても良い訳ではないとおわかりいただけたかと思います。
新築時などは営業マンがつい「タイルならメンテナンスフリーなのでお勧めです!」と勧めてきたりしがちですが、それは間違った認識です。
「メンテナンスフリー」という言葉を信じて放置した結果、雨漏りなど住まいにとって深刻な被害をもたらせたという事例も決して少なくありません。
外壁タイルに対して正しい知識を持ち、10年に一度は外壁診断、必要に応じてメンテナンスを行うようにしてください。