目次
外壁塗装の耐用年数とは?
外壁塗装における「耐用年数」とは、塗料が外壁をどれくらいの年数保護できるのかという意味で使用される言葉です。
同じ意味で「耐久年数」と呼ばれることもありますが、塗装業者の多くが「耐用年数」という言葉を使っています。
塗装の耐用年数は、必ずしもメーカーが公表してる年数通りになるとは限りません。
使用する塗料のグレード、建物外壁に使われている外壁材の種類、そして施工によって建物一軒一軒ごとに違ってきます。
具体的には、シリコン塗料やフッ素塗料など、外壁材に対してどのグレードの塗料を使用したかが耐用年数に大きく関わってきます。
基本的に、アクリルやウレタンよりシリコン、シリコンよりフッ素と、塗料のグレードが上がるごとに耐久性・耐候性が増し、耐用年数が長くなると考えて良いでしょう。
また、同じグレードの塗料で塗装したとしても、塗装する外壁材が何かによっても耐用年数は変わってきます。
外壁材がモルタル壁なのか、窯業系サイディングボードなのか、ALCなのかによって塗料との相性が異なり、相性が良いほど耐用年数は長くなり、相性が悪ければ公表されている耐用年数より短い期間で塗膜の浮きや剥がれが起こる可能性があります。
そして当然、塗装業者の施工内容・技術によっても耐用年数は変わってきます。
古い塗膜をしっかり除去するためのケレン作業、高圧洗浄など、塗装をするに当たって外壁を最適な状態にしたかどうかは、耐用年数に大きく影響します。
高圧洗浄も大切な工程ですが、特にケレン作業は塗膜の耐用年数に関わってくる工程ですので、塗装業者からもらった見積書にケレン作業の記載があるかは必ず確認しておきましょう。
塗料の期待耐用年数とは?
塗料メーカーが発行している塗料のカタログには、「期待耐用年数」が記載されています。
この「期待耐用年数」は、各塗料メーカーが自社で塗料を開発した後に、専用の機材を使って耐久テストを行った数値になります。
ちなみに、この耐久テストでは塗膜を劣化させる紫外線や水、排気ガスなども測定項目に設定されています。
耐久テストによって計算された期待耐用年数は、あくまでも試験の結果としての数値であり、実際の建物に塗装を行なって測定された数値ではありません。
そのため、期待耐用年数はあくまでも期待値であり、実際の耐用年数ではなく目安として捉えることが大切です。
外壁塗装業界を含む建築業界は、新規メーカーが参入しにくい業界と言われています。
その理由ですが、例えば20年前に期待耐用年数が10年の塗料が販売されたとします。
販売からすでに20年が経過しているため、本当に耐用年数は10年保ったのか?10年の間に何か不具合は起きなかったか?の答えは、実際に施工を行なった現場を見ればわかるでしょう。
しかし、5年前に期待耐用年数が20年の塗料が販売されたとしたらどうでしょう?
本当に20年保ったのか?の答えがわかるのは、最低でも15年先になります。
このような理由から、建築業界ではどうしても実績がある建材が優先的に選ばれる傾向が強いです。
お客様に下手なものを勧められないという業者側からすれば当然ですね。
販売から10〜20年経過している塗料であれば、塗料メーカーが公表している期待耐用年数を信用しても良いでしょう。
しかし、販売からそれほど年数が経っていない塗料については、どれだけ長い耐用年数を謳っている塗料であっても、「まだ実地試験の最中」であると覚えておきましょう。
外壁塗装で使われる塗料の種類別耐用年数
前項で、外壁材に対してどのグレードの塗料を使用したかが耐用年数に大きく関わってくるとお伝えしました。
それでは、具体的に外壁塗装で使われる塗料がどれくらいの耐用年数を持っているのか、種類別に見ていきましょう。
基本的に、価格が高くなればなるほど上位グレードになり、そして高耐久になるという考えは間違ってはいません。
ただし、光触媒塗料や断熱塗料は、「自身で外壁についた汚れを落とす」「断熱性能に優れる」といった特殊な性能を持っているからこそ高額になっています。
一概に、価格が高ければ高いほど高耐久という訳ではないので、その点には注意が必要です。
アクリル塗料
アクリル塗料の耐用年数は、5年~7年です。
耐用年数が短く、耐久性・耐候性も他の塗料に劣るため、現在は建築塗装の現場で使われることはほとんど無くなりました。
ウレタン塗料
ウレタン塗料の耐用年数は、7年~10年です。
シリコン塗料に比べても耐用年数が短いため、昔は建築塗装の現場でもよく使われていましたが、現在は外壁塗装の主流ではなくなりました。
ただし、伸縮性に優れている、艶のある仕上がりになる、など機能の面でまだまだ選ばれる場面もあります。
付帯部の塗装などでは、シリコン塗料ではなくこちらのウレタン塗料が使用されることが多いです。
シリコン塗料
シリコン塗料の耐用年数は、8年~15年です。
現在、外壁塗装では主流の塗料であり、「どの塗料を選んで良いのかわからない」という方には、ほとんどの塗装業者がシリコン塗料を勧めてくるはずです。
それくらい実績豊富で安心・信頼の塗料です。
また、耐用年数と価格のコストパフォーマンスが非常に良いので、塗料の希望が無い場合はシリコン塗料を選んでおけば間違いないと言っていいでしょう。
ラジカル制御型塗料
ラジカル制御型塗料の耐用年数は、12年~16年です。
2012年に販売が開始された比較的新しい塗料で、シリコン塗料を超えるコストパフォーマンスを誇ります。
シリコン塗料以上の耐用年数を持っていますが、まだまだ実績が十分ではなく信頼性に欠ける部分があります。
ただし、実際に使用したお客様からの評価も高く、あと数年経って実績が伴えば、シリコン塗料に変わる外壁塗装の定番塗料になるかもしれません。
フッ素塗料
フッ素塗料の耐用年数は、15年~20年です。
長い耐用年数を誇りますが、費用が高額になるため選ばれる場面が限られる塗料です。
初めての塗り替えなど、今後もその家で長く暮らし続けるというライフプランの方にはおすすめです。
一度きりの工事費用で見ると高額になりますが、その長い耐用年数から塗り替えの回数を抑えることができるので、外壁にかけるトータルコストを抑えることができるかもしれません。
無機塗料
無機塗料の耐用年数は20~25年です。
無機塗料とは、セラミックやケイ素やガラスなど、無機成分を含む塗料のことです。こうした無機成分は塗料が劣化する要因となる紫外線の影響を受けることはありません。
しかし無機成分だけでは塗料として必要な伸びがありません。そのため有機成分と混ぜあわせて無機塗料を作っています。
製品によって無機成分が異なります。高い耐用年数を誇りますが、価格は高価であり、塗膜が固いためひび割れが起こりやすいデメリットもあります。
また、塗装する業者の技術も求められます。
塗料の「1液型」「2液型」、「艶有り」「艶無し」でも耐用年数が変わる
塗料は、「何で塗料を薄めるか」によって分類することができます。
具体的には、水で薄めて使用するタイプの「水性塗料」、そしてシンナーで希釈して使用するタイプの「溶剤塗料」です。
さらに、塗料を「1つの缶に入っている塗料だけで使用することができるのか」「別の液体を混ぜ合わせて塗料として使うのか」によっても分類できます。
1つの缶で完結する塗料を「1液型」、異なる液体を混ぜ合わせるタイプが「2液型」になります。
実は、「水性塗料」か「溶剤塗料」なのか、そして「1液型」か「2液型」かでも若干ですが耐用年数が変わります。
耐用年数を重視する場合は、「溶剤塗料」かつ「2液型」の塗料を選べば、より長い耐用年数が期待できます。
ただし、「溶剤塗料」はシンナーで希釈するため、工事中は多少なりともシンナーの匂いがする点、そして「2液型」は混ぜる手間が発生するので若干工賃がかさんでしまう点には注意しましょう。
また、塗料の種類によりますが、艶の強さを「艶有り」「7分艶」「5分艶」「3分艶」「艶無し」と選べるタイプの塗料があります。
この艶も耐用年数に若干影響があり、耐用年数が長いのは「艶有り」になります。
「5分艶」「3分艶」といった艶を抑えた塗料、もしくは「艶無し」のようにマットな仕上がりになる塗料には、添加剤が入っています。
この添加剤によって塗料の純度が下がり、耐久性も下がってしまうのです。
さらに、塗膜の艶には外壁に汚れがつきにくくなる防汚効果もあるため、艶が無ければ無いほど汚れがつきやすく、結果的に耐久性も下がってしまう訳です。
ただし、一度塗り替えれば次回の塗り替えは10年以上先になります。
耐用年数ばかりを気にして、仕上がりや外観はどちらでも良いという方はいらっしゃらないでしょう。
塗料のタイプは工事費用や工事内容、艶の有無は仕上がりに大きく関わってくるので、塗装業者とじっくり話し合って塗料を選ぶようにしましょう。
外壁の耐用年数は外壁素材によっても異なる
前項で、外壁塗装で使われる塗料がどれくらいの耐用年数を持っているのかを種類別に見てきました。
しかし、外壁の耐用年数を考える場合、塗られている塗料の他に考えないといけないポイントがあります。
それは、外壁に使われている外壁材自体の耐用年数です。
ここで注意が必要なのは、例えば耐用年数が30年の外壁材があった場合、ここで言う30年というのは何もしなくても30年品質を維持する年数という意味ではないということです。
10年〜15年に一度はしっかり塗り替えを行い、外壁の耐候性や防水性を保ち続けてようやく実現できる年数なのです。
「30年もつ外壁材って聞いてるし、塗り替えタイミングの15年過ぎてるけどあと15年は何もしなくて良いだろう」という意味では決してないので覚えておきましょう。
日本の住宅に使用される主な外壁材の耐用年数は以下になります。
窯業系サイディングボード:30年~40年
樹脂系サイディングボード:20年~30年
金属系サイディングボード:25年~35年
モルタル壁:20年~30年
ただし上述の通り、どんな外壁材であっても外壁塗装でしっかりとメンテナンスを行なってこその長い耐用年数となっています。
外壁材が劣化してしまい、入れ替えなど大掛かりな修繕工事が必要になってしまっては塗装工事より高額な出費となりますし、何より建物の寿命を大きく縮めてしまいます。
定期的な外壁塗装で、外壁を常に適正な状態に保ってあげましょう。
耐用年数が30年の塗料は存在しない!営業マンの嘘に騙されないで!
いよいよ本題ですが、残念ながら現時点では耐用年数が30年の塗料は存在しません。
しかし、塗装業者の広告や訪問営業などでは、「自社開発の塗料で、耐用年数が30年!」と謳い文句を見かけることがあります。
これは完全に虚偽なので、「そんなすごい塗料があるの?」と信じないように注意してください。
そもそも、エスケー化研や日本ペイント、関西ペイントといった国内の大手塗料メーカーですら作れていない耐用年数が30年の塗料を、街の塗装業者が開発できるものでしょうか?
「自社開発の塗料で、耐用年数が30年〜」と謳っている塗料の実情は、販売されている既存の塗料の混ぜ合わせのような粗悪な塗料です。
耐用年数が30年どころか、通常のシリコン塗料の耐用年数にも満たない年数で不具合が発生するケースがほとんどなのです。
また、「海外製の塗料で耐用年数が30年〜」といった塗料を勧められることがあるかもしれません。
しかしその場合でも、日本の天候や気候をしっかり把握できていない海外製品が30年ももつのでしょうか?
仮にその国では30年もったとしても、日本でも必ずもつとは限らないのです。
「耐用年数が30年」を売り文句に塗料を勧めてくる塗装業者、もしくは営業マンには注意が必要です。
皆様が塗料に詳しくないと考え「バレないだろう」と平気で嘘を言っているか、社長や上司に「そう言え」と指示されて営業を行なっている塗装業界に無知な営業マンか、この二択です。
無機塗料は20~25年とされていますが、そもそもこの耐用年数というのは、「何もしなくてもすべての外壁がその年数もつ」という数字ではありません。
メーカーが特定の実験環境内で行った期待数値です。そのため下地や湿度などの環境によっても変わってきますし、下地が先にだめになってしまうこともあります。
しかもこの最長〇年という数字も、腕の良い職人が時間と手間をかけてしっかりと塗装し、日差しが強くなく年中通して雨が少ない、そして海も遠いと塗料にとって好条件が揃って実現できる年数です。
長い耐用年数のしっかりしたメーカーのものを使用していても、10年に一度は点検を依頼して状態を把握しておくのが理想です。
外壁塗装が耐用年数を過ぎているかのチェック方法
ご自宅の外壁塗装が耐用年数を迎えているかどうかは、外壁塗膜の劣化状況を見ればご自身でもある程度判断することができます。
もし次に紹介する症状が外壁に現れている場合、早めの塗り替えを検討してください。
放置してしまうと雨漏りや外壁材・建物躯体の腐食といった大きなトラブルの原因ともなりかねません。
チョーキング
外壁を指で触るとチョークの粉のようなものが付着すると、その外壁にはチョーキング現象が起こっています。
紫外線や雨を浴び続けることで外壁塗膜は少しずつ劣化し、塗料に含まれる成分の内、「顔料」が粉に戻ってしまい外壁表面に浮き出してしまう現象がチョーキング現象です。
成分が粉に戻っているということは、当然塗料は本来の性能を果たせていません。
チョーキングは、一般の方でもわかりやすい外壁塗装の塗り替えサインですので、見つけたら早めに塗り替えを検討しましょう。
ヒビ割れ(クラック)
皆様も一度は見たことあるかと思いますが、外壁表面にヒビ割れが起こっている劣化症状です。
このヒビ割れの内、幅0.3㎜以下、深さ4mm以下の細いヒビ割れを「ヘアークラック」と呼びます。
いきなりヘアークラック以上の大きなヒビ割れが起こることは少なく、基本的にはまずこのヘアークラックが発生し、そこから徐々に幅や深さが増していきます。
大きなヒビ割れになってしまえば、その箇所から雨水が建物内部へ侵入するリスクが高まってしまいます。
ヘアークラックのように症状が軽微な内に対処するのが得策です。
塗膜剥がれ
塗膜が剥がれてしまい、その下の外壁材が剥き出しになっている状態です。
外壁材が剥き出しになってしまえば、紫外線や雨風が直接外壁材にあたってしまい、外壁材の寿命を著しく縮めてしまいます。
剥がれの範囲が小さい、もしくは一箇所のみの場合は部分補修でも大丈夫ですが、剥がれが多数見つかった場合には外壁全体の塗り替えを検討するようにしましょう。
コケ・藻・カビの発生
コケ・藻・カビといった生物は、水が無いところには発生しません。
つまり、コケ・藻・カビが発生するということは、外壁が常に水を含んだ状態になっているということです。
この場合、外壁塗膜の防水性の低下が疑われます。
防水性の低下は外壁の耐久性を低下させる原因となるので、ただのコケやカビと油断せず、美観回復も含めて塗り替えを検討しましょう。
外壁塗装の耐用年数を長く保つポイントとは?
残念ながら外壁塗装においては、塗料が耐用年数を超えて性能を維持し続けるといったことは起こりません。
例えばシリコン塗料なら耐用年数は8年~15年ですが、「シリコンでも20年もった」といった事例は聞いたことがありません。
しかし、耐用年数を超えることはできなくても、耐用年数ギリギリまで性能を保つことはできます。
最後に、外壁塗装の耐用年数を長く保つポイントについて解説します。
耐用年数が長い塗料を使う
当然ですが、より耐用年数が長い塗料を使えば、次回の塗り替えやメンテナンスを先に延ばすことができます。
現在最も耐用年数が長く実績がある塗料は無機塗料やフッ素塗料で、シリコン塗料が8年~15年の耐用年数に対し、フッ素塗料は15年〜20年、無機塗料は20~25年の耐用年数です。
一度限りの工事費用で考えると、たしかにフッ素塗料はどの塗料よりも高額になるでしょう。
しかし、耐用年数が延びるということは、それだけ外壁にかけるメンテナンス回数を抑えることができ、結果的に外壁メンテナンスのトータルコストを抑えることに繋がります。
もちろん高額な工事のため気軽に選ぶことはできないと思いますので、ご自身のライフプランも考慮して、塗装業者に相談しながら塗料を選ぶようにしましょう。
塗装工事を技術のある職人直営店にお願いする
外壁塗装の耐用年数は、塗料そのものだけでなく塗装業者の技術によっても左右されます。
さらに言えば、どれだけ高圧洗浄やケレン作業など下処理を丁寧にしっかり行なったかにも影響されます。
わかりやすく言えば、「技術があり、下処理など見えない部分も手を抜かず施工してくれる真面目な塗装業者」に塗装工事をお願いするのが得策です。
ペイントGOでは、上記に当てはまる塗装業者として「職人直営店」に塗装工事を依頼することをお勧めしています。
こちらの記事では、職人直営店を含む大手ハウスメーカーや工務店など業者別のメリット・デメリットなどをまとめています。
ペイントGOに登録している塗装業者は、すべてこの職人直営店に該当します。
ぜひペイントGOで塗装業者を探し、耐用年数を最大限延ばせる高品質な塗装工事を行なってください。